本を書きました
フェアトレードは甘くないという本を出版した
Amazon Direct Publishing(KDP)で『フェアトレードは甘くない』という本を共著で出版した(https://www.amazon.co.jp/dp/B0CCLM8SFP)。 当初はKindle版だけだったが、11月16日、紙のバージョンも入手できるようになった。
当初、出版社からの出版を念頭にいくつかの出版社に当たってみたが、芳しい返事がなかった。どうしたものかと共著者と話していて、今更、出版社経由じゃなくてもいいんでは?ということになった。
もともと原稿をMarkdownで執筆していたこともあり、このままKDPで出版すればすごく楽なのでは?とKDPの利用を決断した。
昔と違って、今は出版社の格というものはそんなにない気がする。むしろ検索でどれだけひっかかるかのほうが重要だ。
個人のマーケティング努力によって、販売数は稼げるということだ。
なお、具体的な出版手順は、同僚の太田氏が全部やってくれた。
三人での執筆となるとKDPも共同アカウントが必要なのか?振込口座の登録が必要だが三人共同の口座というのは作成できるのか?などと逡巡しているうちに、さっさと自分のアカウントで手続きを済ませてくれた。
Gitを使って分散執筆・バージョン管理
この本の原稿はMarkdownで作成した。Githubにリポジトリを作成して、共同で編集していくスタイルだ。
基本的には各自ブランチを作成して執筆して、僕がmasterにマージすることにした。ただし、みんなが不慣れなこともあり、変更の競合とか、誰がどの時点のmasterからブランチを作成しているのかとか、口頭で確認しながら作業したりした。
一度は、変更が消えてしまって、手作業で復元、なんてこともやった。
Gitを使っているので、変更が消えることはないはずで、修正したものが消えてしまっても復元が可能なはずなのだが、その辺も不慣れすぎて分からなかった。
ただ、Gitを使えば、ファイル名を「原稿V2.321203坂田修正1204太田コメント」的なものにしなくてもよいことはわかった。 Gitの中で、同じファイルにお互い変更を繰り返していけば、それだけでバージョン管理ができてしまう。
Wordなどでもバージョン管理はできるのだが、あまり使っている人がいない。
文書を手書きではなくコンピュータを使うことのメリットとして、バージョン管理はもっと注目されてよい。
Markdown
本の原稿はMarkdownで作成した。Markdownというのは、テキストファイルに見出しなどに一定の適宜記号を使用することで、文章構造を表現できるものだ。
文章を書くなら、Wordでも良かったのかもしれないが、せっかくなので新しいことをやろうということで、Markdownでの執筆に踏み切った。共著者の二人も分析の際にはR Markdownを使っていたので、それほど抵抗はなかったようだ。
図表番号が自動でつかないなどの問題はあったものの、原稿ファイルがとても軽いのはよかった。ファイルを開くのも保存するのも一瞬だ。
なにより執筆を使い慣れたエディタで行えるのはありがたい。僕はEmacsだし、二人の共著者はVisual Studio Codeを使用している。それぞれ好きなエディタを使えるから、相手に合わせる必要もない。おまけに僕のWordはしばらくつかっているとなぜか保存できなくなったり日本語変換できなくなったりする。
収益
作家の懐具合というのは外から見るとよくわからない。
僕らのような並の研究者は本を書いて儲けるということはあまり期待していない。印税率が何%なのかすら知らない。だいたい印刷部数が2000部とかなので、本を一冊書いて印税が10%と考えると20万円入ってくるかどうかというところだと思う。本を書く労力を考えると時給いくらなんだ?と言いたくなる。だから、お金のことを考えること自体を放棄している。
それでも20万円だ。もし出版で20万円入ってきたらどうしようか?3人で執筆したから3で割って一人7万円ぐらいか。
KDPのばあい、売上から著者に支払われる金額はかなり高い(検索すると、35%ぐらいみたい)。そのため、販売部数が少なくても多少の売上にはなるかもしれない。
ちょっぴり期待してしまうけれど、せっかくフェアトレードをテーマに書いたのだから、フェアトレードコミュニティに貢献してみたい。フェアトレードはビジネスだと言われるけれど、それはフェアトレードでモノを売っている人だけだ。フェアトレードに関する普及啓発活動を行っている人はほとんどがボランティアだ。現に僕はフェアトレードタウンの認定委員だが、活動にともなう収入はない。
もし僕たちが本を書くことで、そういう人たちに少しでも貢献できたら楽しいんじゃないだろうか?僕たちは研究の過程で色んな人にお世話になっている。そういう人たちに謝辞を述べることができるけれど、現場の人が一番欲しいのはやっぱりお金だろう。それも当事者が自由に使えるお金だ。
僕たちは年末に本の収益を寄付する先を相談して決めることにした。支援対象はフェアトレードに限定せず、社会貢献活動をしている団体だ。ずっと同じ団体に寄付してもいいけれど、各自の関心は異なるし、時期によっても異なるだろう。そういうことを勘案して、毎年寄付先を決めてみる。
というわけで、僕たちは本を出版した。販売部数とか寄付先とかはここでも報告する予定だ。